金属アレルギーフリーのジルコニウムの指輪の危険性について

金属アレルギーフリーのジルコニウムの指輪の危険性

色あざやかに発色する、面白い性質を持ったジルコニウム。

金属アレルギーの心配がない素材でもあり、注目が集まっています。

しかし、ここ20〜25年ぐらいしか宝飾品に使われていない新しい素材だけに、

危険性はないのか?
何かデメリットがあるんじゃないか?
健康被害の可能性は?

などなど、気になるところです。

しかもジルコニウムは、宝飾品に使われる以外では、原子力発電所の核燃料の容器とか、そういう分野でしかほとんど実用例がないために、安全性や危険性に関する情報がなかなか見つかりません。

実際、ジルコニウムの危険性を調べて、当サイトに辿り着く方が、とても多いようです。

そこで、今日は、ジルコニウムの宝飾品の開発に携わって、かれこれ17年になる私の見地から、ジルコニウムの指輪の危険性を考えられる限り、すべて書き残しておきたいと思います。

考えられうる危険性は、次の3点になるかと思います。

1.金属アレルギーをはじめとした生化学的な危険性

2.割れたり、あるいは硬くて切断できないなどの物理的な危険性

3.加工する制作者側の危険性


1つずつ、詳しく書いてゆきたいと思います。



1.金属アレルギーをはじめとした生化学的な危険性

ジルコニウムの生化学的な危険性は、限りなく低いです。

ほとんどの酸やアルカリに溶けず、化学的に安定しているため、金属アレルギーや金属中毒の原因になることがありません。

金属イオンとして溶け出さないので、ガルバニック腐食も無いですし、電池効果による電流の発生もないです。

金属ジルコニウムが宝飾品に使われるようになったのは20〜25年ぐらいですが、ジルコニウムの酸化物であるジルコニアセラミックは、人工骨や歯科材料として、ずっと以前から用いられています。

ジルコニウムの鮮やかな発色も、原理としてはジルコニウム表面にジルコニアの酸化膜を発生させて、構造発色(モルフォ蝶やシャボン玉と同じ、表面構造によって光の干渉が起き発色する)を起こさせたものです。歯科材料と同じジルコニア・酸化ジルコニウムなので安全な発色の原理です。塗料のような毒性もありません。

ジルコニウムの発色は、塗装ではなく、生化学的に安全な「構造発色」です。

ジルコニウムの生化学的な安全性は、間違いないと言っていいと思います。


2.割れたり、あるいは硬くて切断できないなどの物理的な危険性

ジルコニウムは、硬さは金やプラチナの2〜3倍ぐらいの硬さがあり、かつ粘りのある金属です。

粘りがあるので、曲がることはあっても割れたりしないですし、その破片や鋭い破断面で怪我をするということはないです。

また逆に、骨折などの事故で指輪が万が一抜けなくなってしまった時は、男性の握力であればニッパーで切断することができる硬さです。

タングステンの指輪(実際には超硬合金の指輪)は、硬すぎるために骨折時に指輪を切断できず、指が壊死してしまった事故が起きたというニュースを聞いたことがありますが、ジルコニウムはそういう危険性は限りなくないです。


3.加工する制作者側の危険性 

実は、これがもっとも大きな危険性かもしれません。

ジルコニウムの粉体には爆発性があることが知られていますが、これはジルコニウムが酸素と激しく反応する性質を持つためです。

同様に、ジルコニウムを削り出すときに発生するジルコニウムの削り屑は引火すると、激しく燃え上がります。

こちらに、ジルコニウムの削り屑の激しい発火の様子を動画に撮ってみました。

こまめに削り屑を管理しないと、もし万が一溜まった削り屑に引火した場合、大事故に繋がりかねないです。しかも一度発火が連鎖すると、水をかけても消火できないばかりか、水分子から酸素を引き剥がして反応し更に燃え上がるという性質があります。

これは本当に怖いです。ジルコニウムの素材の研究開発をしていた当時、ノウハウが積み上がっていない頃は、何度か冷や汗をかいた経験があります。

ちなみに、ジルコニウムは、戦略物資に相当するので、個人が手に入れることは難しくなっています。また、この引火の危険性からも安易に取り扱うことはお勧めできません。弊社でもジルコニウムの切削加工を行なうのは、私ひとりだけです。


まとめ

以上、ジルコニウムの危険性を考えらえうる限り書き出してみましたが、実用上、危険な要素は見つかりません。出来上がった状態のジルコニウムの指輪は、非常に安全なものです。

ジルコニウムをはじめ、TOKYO DIAMONDで扱う11種類の安全な素材について、制作事例をこちらにまとめました。どうぞご覧ください。
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