シルバー925の指輪を着けて金属アレルギーになったのですが。原因と対策は?
「シルバーの指輪に、金属アレルギーが出て着けられなくなってしまったのですが、、」
「シルバー925の指輪って、夏場はかゆくなるんですよね。」
「シルバーのピアスに金属アレルギーが出てしまって、気に入っているので着ける方法はありませんか?」
こんなふうに、相談に来られる方が多いです。
そこで、今日は、シルバーとシルバーの金属アレルギーについて、詳しくお話ししたいと思います。
目次
シルバーとは?シルバー925とは?
シルバーというのは、銀のことです。原子番号47、元素記号Ag、比重10.49の金属です。
純銀の光の反射率は98%で、全金属中で最も白く輝く金属です。ただ、温泉や汗などに含まれる硫黄によって硫化して黒く変色する性質があり、白い輝きを永続することが難しいのが欠点です。
銀(シルバー)の純度表記は1000分律で表わされ、シルバー925というのは925/1000、つまり92.5%の純度の銀という事を表します。残りの7.5%は銅です。
世の中の銀製品、特にアクセサリーは、このシルバー925で作られていることが多く、銀の鋳造品はシルバー925で作ります。シルバー925はスターリングシルバー(sterling silver)とも言われたりします。
ちなみに彫金系の一点モノの作家の作品では、シルバー950が使われることが多いです。シルバー950は銀の純度が95%で残り5%が銅です。シルバー950の方が925よりも彫金加工がしやすく、また繰り返しの加熱によって「火ムラ」と呼ばれる変色もシルバー950の方が起こりにくいことから、彫金家には好まれます。
シルバー925の素晴らしいところ
92.5%の純度の銀、と聞くと、「残りの7.5%も混ぜ物じゃないか」と思う方もおられるかもしれませんが、アクセサリーの世界で、ほとんどの銀がシルバー925の純度で扱われるのには、訳があります。
銀製品の素材として見ると、純度100%の銀(純銀、Ag1000)よりも、シルバー925の方が、ずっと優れているからです。
純銀よりもシルバー925のほうが優れている点を挙げると、次のようになります。
- 硬くて丈夫、変形にも強い。宝石のホールド力も高い
- バネ性がある。ある程度の変形では元の形に戻る。
- 耐摩耗性が高い。磨り減ったりしづらい
- 鋳造時(熔解時)の流れが良く、精密な鋳造品が作りやすい
- 鋳造時にスができにくい。(純銀は熔解時に固溶した酸素が冷却とともに放出されて、スが生じやすい)
- 時効硬化性を持つので、熱が加わっても鈍っても置いておくだけで硬くなってくれる。
これらは純銀にはない特性です。ただ銅を少し混ぜただけなのに、こんなに性質が向上するため、銀製品の世界(特にシルバーの鋳造アクセサリーの世界)ではシルバー925が好まれるのです。
有名なところではクロムハーツも、ファッションブランドのシルバージュエリーも、路上販売で売られているものも、シルバー925(silver925)の刻印がされているものは全て、材料は同じシルバー925です。
シルバー925は、金属アレルギーになるのか?
さて、シルバーやシルバー925は、金属アレルギーになるのでしょうか?
実際のところ、銀というのは、純粋な状態(=純銀)では非常に金属アレルギーを起こしにくい金属です。統計的には純金よりも純銀の方が金属アレルギーの原因になりにくいというデータもあるほどです。
ですが、シルバー925となると話は別。混ぜられた7.5%の銅が原因になって、金属アレルギーの原因になってしまうことが多いようです。
金属素材の金属アレルギーになりやすさを並べると次のようになります。
一番金属アレルギーになりやすい部類の金属
ニッケルやニッケルを含んだ合金(洋白など)やニッケルメッキ製品、
ブロンズ
真鍮
クロムメッキの製品
鉄、鋼など鉄系合金
アルミや各種アルミ合金(ジュラルミンなど)
金属アレルギーに過敏な方は避けたほうがいい部類の金属
パラジウム
形状記憶チタン合金(チタンとニッケルの合金)
ホワイトゴールド(金とパラジウムの合金)
シルバー925
シルバー950
ピンクゴールド
ステンレス(SUS304)
プラチナ900(プラチナに10%のパラジウムを混ぜたもの)
サージカルステンレス(SUS316L)
プラチナ950(プラチナに5%のルテニウムを混ぜたもの)
金属アレルギーになりにくい金属素材
純プラチナ
18金イエローゴールド
22金イエローゴールド
純銀
純金
金属アレルギーの心配がない金属素材
純チタン
純ジルコニム
純ハフニウム、
純ニオブ、
純タンタル
と並びます。
これは、あくまでも傾向の順であり、個人差があります。ただ、グループ分けをしたグループ内で順序が入れ替わることもあっても、グループを超えて順序が入れ替わることはほとんどないと思います。
ですので、シルバーアクセサリーのシルバー925やシルバー950の金属アレルギーになりやすさは、安価なメッキアクセサリーよりは安全ですが、過敏な方は避けたほうが賢明という位置付けです。
エターナルシルバーや、ホワイトシルバー、ゲルマニウムシルバーの金属アレルギーについて
銀は、置いておくと黒い「燻し銀(いぶしぎん)」の色に変色することが知られています。
これは、汗などの体液や、温泉に含まれる硫黄によって硫化銀が発生することによって起きる変色です。またシルバー925のように銅が加わると、変色はより起こりやすくなります。
この燻し銀の変色は、これはこれで銀の魅力だとも言えますが、敬遠する方も多いです。それで、ジュエリー制作会社は各社、合金開発を頑張っていて、エターナルシルバーや、ホワイトシルバー、ゲルマニウムシルバーなどの名称で「変色しにくい」シルバーを出しています。
これらは、主にパラジウムを混ぜることで、銀の変色を防いだ合金です。プラチナを混ぜたものやルテニウムを混ぜたものなどもあります。ゲルマニウムシルバーはパラジウムとゲルマニウムを混ぜた銀です。
変色しにくいことを謳ったシルバーには、ほぼ全ての場合パラジウムを含みますので、金属アレルギーの方は注意が必要です。個人差はありますが、シルバー925よりもパラジウムを含むシルバーのほうが金属アレルギーになりやすいでしょう。購入の際には成分を確認した方がいいと思います。
パラジウムは添加物として高機能な金属なのですが、金属アレルギーの報告があり問題も多いです。パラジウムの金属アレルギーについては、こちらのコラムに詳しく書いています。
→ コラム:パラジウムの金属アレルギーの報告が増えています。
シルバーに金属アレルギーが出た時の2つの対策
金属アレルギーというのは、その原因になる金属を取り除けば、基本的にそれ以上ひどくなることはないので、まず取り外しましょう。
その上で、それでもそのシルバーアクセサリーが気に入っていて着けたい場合の選択肢は以下の2つが挙げられるかと思います。
1.金属アレルギー用のコーティング剤を使う。
2.金属アレルギーの原因にならない別の金属に取り替える。作り替える。
金属アレルギー用のコーティング剤については、<こちら>などがamazonで販売されているので、塗布をして金属部分が直接肌に触れないようにすることができます。
金属アレルギー用のコーティング剤のメリットとして、安価で、手軽に、そのままのアクセサリーをほとんどそのままの見た目で着けられる点が挙げられます。
デメリットとしては、コーティングなのでしばらくすると剥がれてしまう点です。特に磨き上げた金属表面はツルツルしていてコーティングが剥がれやすいです。
安価に試せるので、応急処置的なものと捉えて、試してみるのがいいと思います。また手間を惜しまなければ、繰り返しこまめに塗り直せばトラブルを避けられます。
別の金属に取り替える場合は、上記の順番の中で、より下に並ぶ金属を選ぶことです。
ちなみに、シルバー925で金属アレルギーが発症する方は、同じく銅を含む18金でも金属アレルギーは発症しやすい傾向にあるので注意が必要です。
例えば、ピアスであれば、ポストやフープの部分だけ、純チタンに取り替えるのは有効です。ネックレスの場合でも肌に直接触れるチェーンや留め具を純チタンに取り替えることは有効です。
参考:
純チタンのポスト
→ https://amzn.to/2VQjPxZ
純チタンのフープ(フック)
→ https://amzn.to/2Yo987E
純チタンのチェーン
→ https://amzn.to/2VVjg69
純チタンの留め具
→ https://amzn.to/3d1VniS
→ https://amzn.to/2KNH8lF
コーティング剤(メタルコート)
→ https://amzn.to/35nddKo
100パーセント金属アレルギーの心配がない素材
金属アレルギーの心配が全くない金属があります。
それが、タンタルという金属です。
聞き慣れない名前ではありますが、産出量が非常に少ない希少金属(レアメタル)です。
タンタルは、人間の汗をはじめ、どんな酸やアルカリや化学物質にも溶けないので、金属イオンが溶出することがありません。もちろん温泉や海水に浸かっても変色もくすみもありません。
希少な上に加工が難しく(融点は驚異の2996℃!)、宝飾品として加工できる会社はほとんどないのですが、医療分野では人口骨や手術用縫合糸、血管に通すカテーテルなどの用途に用いられていて、生体適合性の高さがよく知られている安全性の高い金属です。
金やプラチナにさえ金属アレルギーが発症してしまう方でも、タンタルであれば心配はありません。アトピーの方でもタンタルの着用によって悪化することはありません(もちろん汗や汚れなど、金属アレルギー以外の要因については別ですが)。
実際のところ弊社では、金属アレルギーの相談を受け、これまでにこのタンタルを用いて10年近く指輪を制作してきましたが、金属アレルギーが発症した例は全くのゼロです。
タンタルは、黒い金属で、金(ゴールド)のように展延性が高く、重さや性質などもゴールドに似ている金属です。見た目だけがゴールドとは違って黒色なので、漢字を当てるとしたら黒金、あるいはブラックゴールドと呼ぶと性質をうまく言い当てていると思います。
いぶし銀とはまた少し違った重厚な雰囲気が、金属アレルギーに関係なくとも人気です。
ただ、価格としては、シルバーの数倍になってしまうので誰でも購入できるわけではないかと思いますが、結婚指輪や一生物のジュエリーとして素晴らしい最高級の素材です。
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こちらに詳しく書いているので読んでみてください。
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このコラムの執筆者
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