金属アレルギーに効く薬って、あるのでしょうか??

金属アレルギーに対する薬は、大きく分けて4つあります。

【1】炎症を抑える為の塗り薬(=ステロイド外用剤)

【2】かゆみを抑える為の飲み薬(=抗ヒスタミン内服薬)

【3】体質改善のための薬(=漢方、その他)

【4】金属製品のほうに塗る薬(=コーティング剤)


それぞれ、一長一短がありますので詳しくお伝えしたいと思います。

ちなみに本コラムは、医療の専門家としてではなく、あくまでも金属の専門家・ジュエリー素材の専門家として書いています。

なるべく簡単な言葉で、実際に役立ててもらうことを第一に書いていますので、薬剤の作用機序などにもし間違いがある場合は指摘いただければ幸いです。



そもそも金属アレルギーとは?

金属アレルギーは原因となる金属と皮膚や粘膜が接触することによってかぶれる、接触皮膚炎の一種です。

軽症の場合は、金属が触れた部分に赤みやブツブツ、腫れ、かゆみが起こります。

更に症状が進むと、かゆみが強くなり、接触した部位の周りまで炎症が広がります。

そして更にひどくなると、発熱や全身がだるくなる、などの全身の症状が現れる場合があります。これは宝飾品では起こることは少ないですが、歯科金属やインプラントなどに含まれる金属が原因になる場合に、消化器から吸収された有害な金属イオンが血液から全身に巡ることで全身型の金属型アレルギーを発症することがあります。

特に反応が出やすい金属は、ニッケル、クロム、コバルト、亜鉛、スズ、銅などです。その他、最近は歯科金属に含まれるパラジウムに反応が出ることも報告が増えています。

ですので、日常で触れるほとんどの金属は、金属アレルギーの原因になる可能性があります。



出来るなら根本療法、場合によって対症療法

金属アレルギーを根本から治せるなら、治したいですね。

よく、東洋医学は根本療法で、西洋医学は対症療法だ、と言われたりします。

東洋と西洋にハッキリと分けられるほどそんなに単純だとは思いませんが、時にこの2つのアプローチは対立して見える時があります。

例えば、西洋医学から見ると東洋医学は「まやかし」や「非科学的」と言われたりしますし、一方で東洋医学から見ると西洋医学は「その場しのぎ」とか、症状を薬で抑え込むとより深刻な症状に進んでしまう、と考えられたりします。

私個人の考え方としては、根本治療がいいと思っています。また、あらかじめ防ぐ予防方法があるなら、そうしたいと思います。塗り薬や飲み薬で症状が消えても、根本が解決していなければ問題がすり替わっただけのように見えるからです。また薬の服用は代謝に関わる臓器に負担を掛けるなど副作用も心配です。

ただ、身近な人が苦しんでいるときに、症状がひどい場合は、薬で症状を抑えることも必要かと考えます。



服薬の前に、まず金属製品を外しましょう。

東洋医学(根本療法)と、西洋医学(対症療法)いずれを選ぶにしても関係なく、金属アレルギーの症状が現れた時は、まず金属製品をすべて外しましょう。

宝飾品や衣服、メガネなどでしたら、外すことは容易だと思いますが、例えばピアスの場合は、外したことでピアスホールが塞がってしまうことが心配されます。この場合はシリコンや樹脂製のピアスに替えてしばらく様子を見てみるのが良いのではないかと思います。その際、衛生面にも気をつけてください。汚れた手で触らないこと、汗をかいたら洗い流すこと、シリコンや樹脂製のピアスの使い回しにも注意です。

他、歯科金属が口内に入っている方は、自分ではどうしようもできないので、歯医者さんに相談する必要があります。

ゴムメタル歯列矯正ワイヤー(Ti・Nb・Ta・Zr合金)
転載元:(株)JM Ortho HPより

銀歯(金×銀×パラジウム合金)はセラミックや樹脂に替えることができますし、歯列矯正の器具もニッケルを含まない器具(ゴムメタルやベータチタンなど)が開発されています。

歯に詰められた金属から常に体内に金属アレルギーの原因物質が供給され続けていると、いくら薬を飲んでも、その他の体質改善を行なっても効果が出ません。まず原因の除去が大事です。

なおチタン製のインプラントは金属アレルギーの心配は限りなく少ないとされています。またチタンインプラントに金属アレルギーが出る体質の方にはジルコニアセラミックのインプラントもあります。



症状は、基本的には静観

金属製品を体からすべて外したら、慌ててなにか薬を服薬するよりも、しばらくは様子を見る事が大事です。

基本的に、金属を身につけていなければ(溶け出した金属イオンを取り込んでいなければ)、金属アレルギーの症状は治まってゆくはずです。

もし、それでも症状が改善しない場合は、医療機関に相談しましょう。ほか食物アレルギーやハウスダスト、蕁麻疹やその他のアレルギーの可能性も考えられます。



減感作療法は金属アレルギーに効果がない?

アレルギーの治療法には、減感作療法(げんかんさりょうほう)という方法がある事が知られています。

食物アレルギーや、花粉アレルギーなどでは、少しずつ摂取して慣らす方法が、「アレルゲン免疫療法」とか「減感作療法」と言われて、有効とされています。

子供(赤ちゃん)の食物アレルギーでは少しずつ摂取して慣らしたり、漆(うるし)のアレルギーも漆職人は少しずつ摂取してならすと言います。

しかし、減感作療法はI型アレルギー(IgEが関与する即時型アレルギー)である食物アレルギーでは効果があるとされますが、IV型アレルギー(感作T細胞が関与する遅延型アレルギー)である金属アレルギーには効果がないとされています。

むしろ、年齢を重ねるにつれて金属アレルギーを発症する金属の種類が増えてゆく傾向がありますし、女性であれば出産を境にそれまで大丈夫だったプラチナの指輪に金属アレルギーが出るようになったという報告もよくお聞きします。

また、歯科金属を入れたままずっと放っておいて、慣れてゆくということも無いようです。やはり皮膚や粘膜に触れる金属を取り除く必要があります。



どうしても症状が気になるならステロイド外用薬

場合によっては、すぐに症状を抑えたいという方もいらっしゃると思います。

赤みや腫れを見せたくない場合、痒くて眠れない場合、子供であれば痒くて掻いてしまい余計にひどくなってしまう場合などもあります。

また症状が出はじめて、歯科金属を取り除くまでに、時間がかかる場合なども考えられます。

こういった場合に用いる、症状を抑える薬があります。

塗り薬として用いられるのが、ステロイド外用剤です。

ステロイドは人体で作られる副腎皮質ホルモンの1つで、塗り薬として用いられるものは糖質コルチコイドや糖質コルチコイドの誘導体を人工的に合成したものです。

炎症を抑える作用や免疫を抑制する作用があり、赤みや腫れを鎮めてくれます。

「ステロイド」と物々しい名前ですが(一時期、アスリートのステロイド剤が問題になった事がありましたね。)、アトピー性皮膚炎や湿疹や虫刺されなど、皮膚科ではステロイド外用剤が比較的手軽に処方されています。

比較的手軽に手に入ることには賛否はあると思いますが、amazonでも化膿止めの外用薬として、抗生物質(抗菌剤)とステロイドを含有したクロマイ-P軟膏などが購入できます。

ステロイドは薬剤の強さに数段階のクラス分けがあり、副作用の考慮も含め、医療機関に相談の上、処方してもらいましょう。



飲み薬の抗ヒスタミン内服薬

飲み薬として用いられるのは、抗ヒスタミン内服薬です。

塗り薬のステロイド剤よりも、症状が重い場合に処方されることが多いようです。

体内で生産されるヒスタミンの過剰分泌がアレルギー症状の原因になるので、このヒスタミンを抑える薬剤です。

花粉症の薬や風邪薬にも含まれていて、ほか酔い止めにも含まれています。最近では眠気や吐き気、口の渇きなどの副作用が少ない第二世代抗ヒスタミン剤が出ています。

アレグラFXアレジオンなどの製品名で同成分の第二世代抗ヒスタミン剤が、花粉症の飲み薬として市販されてはいますし、金属アレルギーに対する作用機序も基本的に同じですが、医療機関に相談の上、処方してもらうことをおすすめします。



金属アレルギーを改善する漢方は?

それでは、金属アレルギーを改善する漢方薬はあるのでしょうか?

私がこれまで調べてきた限りでは、漢方で治すという事ではなく(1つの薬で治すという発想自体が対症療法的な考え方)、漢方の毒素排出作用で症状を長期的に改善してゆくという考え方のようです。

体内に蓄積した金属イオンを排出する(代謝を促進する)、あるいは、排出しやすい体質を作る(代謝障害の調整)という事がポイントです。

ここでは、体内に蓄積された金属イオンをはじめとした有害物質をヒトの体は普段から排出しようとしていて、皮膚からも出てゆくときにアレルギーを起こしながら、場合によってアトピー性皮膚炎などの症状を伴って排出されてゆくと考えられています。

ステロイドの塗り薬や、抗ヒスタミンの飲み薬のように、症状のメカニズムに直接働きかけるわけでは無いので、漢方で効果効能を謳うことは難しいようです。必ず症状が改善するということも言えないですし、どのぐらいの期間で効くということも言えないです。

ただ逆に、体内に蓄積された有害物質の排出(いわゆるデトックス)は、金属アレルギーだけでなく、肌荒れ、アトピー、不妊症や月経困難症の改善など複数の効果が期待できるので、やるだけの価値はあると考えられます。

デトックスの漢方で手に入れやすいものとしては、クラシエの十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の効果は、良い評判をよく聞きますが、服用は専門家に相談の上のほうが望ましいでしょう。

また、アレルギーの漢方治療について、大阪の松本漢方クリニックの松本仁幸先生の評判は、よくお聞きします。
松本漢方クリニック



デトックスは漢方以外の方法も

漢方の金属アレルギーに対する効果は、主として有害物質の排出であることが分かりました。

であるなら、漢方以外の方法であっても、デトックス効果のある方法は、生活の中に取り入れられるのでおすすめです。

身近な方法としては入浴、食物繊維を多く摂る食生活、朝にコップ一杯のきれいな水を飲む習慣、白湯を飲む習慣、軽い運動で汗を流す、代謝を上げる、などなど。ほか断食(ファスティング)にもデトックス効果を目的とした方法があります。身近な方法や習慣で排出を促進するのは良いですね。

現代生活は農薬、環境ホルモン、水の汚染、大気汚染、生物濃縮など、汚染を避けて生きることは難しいですし、怒りやイライラによって体内に有毒物質が生産されるとも言われます。金属アレルギーに関係なくとも、有害物質を溜め込まない、人体に本来備わる有害物質の排出作用を手助けする方法を取り入れたいところです。

無理のない範囲で、劇的な効果などは期待しすぎないで、生活習慣の中に取り入れられると良いですね。



金属製品を身に付けるなら安全なものを

そして改めて、金属製品や、ジュエリーを身に付けるなら、金属イオンが溶け出さない素材を選ぶことをおすすめします。

金属イオンが溶け出さない安全な素材については、こちらのコラムで詳しくまとめています。
【金属アレルギー対応】安全な5つの素材と避けるべき10の素材


金属製品に塗るコーティング剤について

プラスティック系のコーティング材(メタルコート

あとは、お気に入りのジュエリーで、それをどうしても着けたい場合は、プラスティックのコーティング材を塗布する方法もあります。マニキュアのような扱いで、簡単にできるコーティング材です。

ただ、コーティングは剥がれやすく、コーティングが剥がれると金属部材が露出して金属イオンが溶け出してくるので、こまめな塗り直しが必要になります。

コーティング剤は、ピアスのピアスのポスト(軸)に塗布するのは、用いやすいと思います。ピアスの細いポストであれば、剥離しづらいからです。

チェーンには用いることはできません(固化してしまいます)。また指輪にも向かないです。応急処置としては使えなくはないですが、数日で剥離してしまいます。

現在、市販で手に入るコーティング剤は、メタルコートアレルギークリアSweat Barrier、の3種類があります。

メタルコートはアクリル系樹脂のため、リムーバーやマニキュアの除光液など有機溶剤で除去でき、使いやすいです。

アレルギークリアは、成分は変性シリコンとIPA(イソプロピルアルコール)溶媒。被覆力、耐久性はアクリル樹脂に比べて高くて長持ちするようですが、宝石部分に付着すると宝石が曇ってしまい、また除去もしづらいのがデメリットです。

Sweat Barrierは、成分はフッ素樹脂とフッ素系溶媒。無色透明の薄い皮膜で、宝石類に付着しても、見た目も大きく変わらないようです。

3つとも、多少の被覆力の違いはあれど、いつかは剥離してしまうことには違いがないので、繰り返し塗布をして使用することを考えると、綺麗に除去をして再塗布がしやすいメタルコートが使いやすいのでは、と個人的には思います。



まとめ

金属アレルギーに対する薬として、4つの分類があることを紹介させていただきました。

【1】炎症を抑える為の塗り薬(=ステロイド外用剤)

【2】かゆみを抑える為の飲み薬(=抗ヒスタミン内服薬)

【3】体質改善のための薬(=漢方)

【4】金属製品のほうに塗る薬(=コーティング剤)


順番としては、まず金属を外す。そして長期的には金属イオンはじめ有害物質を排出する生活や習慣。そして短期的には医薬品の助けも借りる。というのが理想です。

医療機関でも、急性の症状には医薬品をもちいつつ、長期的には医薬品の使用量を減らしながら、有毒物質の排出を続けてゆくという方法が薦められます。



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