ジルコニウムの弱点?鮮やかな発色が色落ちしてしまうことを、どう考えたらいいか?

鮮やかな発色が人気のジルコニウムの指輪。

金属アレルギーが起こらないことと、この鮮やかな発色が起こる、珍しい特徴から、人とはちょっと違う個性的な結婚指輪として、人気があります。



そんなジルコニウムの指輪のご購入(ご注文)を希望される方には、いつも

 「発色は、表面だけのものなので、いつかは色落ちしてしまいます」 

と、お伝えしています。


では、どれぐらいの期間で色落ちしてしまうのでしょうか?

最近、再発色のご依頼をいただいたジルコニウムリングの事例を紹介させていただきつつ、

発色と色落ちのメカニズム、どうすれば色は落ちやすく、あるいはどうすれば色落ちしづらいのか?

色落ちしてゆくことを前提にして、どうしたら美しいのか、あるいはどうしたら残念な色落ちになってしまうのか?

それらをまとめさせていただきたいと思います。


ジルコニウムの色落ちの事例

まず、紹介させていただきたいのが、こちらの事例です。

完成は2015年10月。色はビビッドなブルーとグリーンの中間、熱帯地方の海のような鮮やかなトロピカルグリーンです。

当時の実際の制作記録は、<こちら>

そして、2021年9月に、再発色のご依頼をいただいた際の記録写真がこちらです。約6年間の着用での色落ちということになります。

女性リングのほうだけ、再発色を依頼いただきました。

なお、男性リングは、それほど着用されておらず、革紐に通してネックレスにされていたようで、発色はそれほど変化しておらず、このジルコニウムの発色は、紫外線劣化などの経年変化は起きないことが見て取れると思います。(ジルコニウムの色落ちをさせるのは、キズや擦れなどの物理的な摩耗だけということです。)


ジルコニウムの発色と、色落ちのメカニズム

ジルコニウムの発色は、ジルコニウムの酸化被膜が光の干渉作用を起こすことによって起こるものです。

モルフォチョウやタマムシなど、昆虫が色鮮やかな色を持つこととと同じ、「構造発色」によるものです。





酸化被膜は陽極酸化処理によって生成しますが、その被膜の厚みが、得られる色を決定します。処理電圧で膜厚をコントロールできるため、得られる色を自在にコントロールできるという仕組みです。

このジルコニウムの発色被膜(酸化皮膜)は、化学的に非常に安定しているため変化することが少なく、顔料や塗料などとは違って紫外線劣化なども起こらず、半永久的に残ります。このことから金属アレルギーや塗料によるカブレなども起こりません。

また、被膜の硬度は鉱物ジルコニアとほぼ同等の、モース硬度8.5。比較的キズもつきづらく、耐摩耗性があります。

ただ、ジルコニウムの被膜よりも硬い物体に当たると、キズがつき、キズが重なることで色落ちしてゆきます。

例えば、ジルコニウムの被膜よりも硬い物体は、岩石類や陶器、磁器、その他、化粧品のファンデーションに含まれる酸化チタン粉末などが挙げられます。そういう意味で、日常生活でジルコニウムの発色の色落ちにつながるようなものは、結構多く存在します。


ジルコニウムの発色の色落ちは、どう考えたらいいのか?

ジルコニウムの発色は、色落ちしてしまう、ということを前提に考えることが必要です。

購入した時の色が、その後ずっと同じ鮮やかさのまま、と思っていると、がっかりした気持ちになります。


以下、ジルコニウムの発色と、色落ちの特徴や、デザインを考える上での注意点を、思いつく限り列挙してみます。

・角や出っ張りなど、着用時に衝突しやすい部位の発色は、早く色落ちしてゆく。

・リング内周の色の方が、リング外周の色よりも長持ちする。ただリング内周の色も、手に付着したファンデーションなどが研磨材の役割をして、少しずつ摩耗してゆく。

・衝突にさらされない部位の色は、いつまでも残る。例えばラインの中に入れた色など

・被膜が厚い色ほど、色落ちには強い。皮膜の厚みが薄い方からブルー、イエロー、ピンク、パープル、ビビッドブルー、グリーン、というように膜厚に応じて色味が変化します。

・色落ちしてしまったら、再度、磨き直して、再発色が出来る。その際に、別の色に変更も可能。再発色の費用は、リング1本あたり10,000円(税別)。

・色落ちしても美しいデザインを選ぶことも考慮したい。鮮やかさが失われてゆく過程も愛でられるワビサビ的な考え方もを取り入れることも。この辺りは、微妙なデザインの工夫でも大きな違いをもたらすことが可能ですので、ご相談ください。


どうぞ、ジルコニウムの指輪を注文される際の、ご参考にされてください。


このコラムの執筆者


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