タングステンの指輪は、本当に金属アレルギーの心配がないのか?

最近よく、

「タングステンの指輪って、実際どうなんでしょうか?」

「タングステンの指輪は、金属アレルギーの心配がないのでしょうか?」

というような、ご質問をいただきます。


またタングステンの指輪は、最近amazonなどでも販売されていて、「金属アレルギーを引き起こしにくい素材」とか、「アレルギー体質でも安心」、のような書き方で販売されているのを見かけます。


いやいや、市販の「タングステンの指輪」には、金属アレルギーの原因になりやすいコバルトやニッケルが含まれています。気をつけましょう。

ですので、正しい情報をちゃんと書いておかなければ、と思った次第です。

ちなみに、弊社では「タングステンの指輪」を販売してはいないので(制作をすることはできますが、販売しない理由も後述します)、客観的な視点と正確な情報をもとに書かせていただこうと思います。



タングステンとは?

タングステン鉱物(灰重石・シェーライト)
出典:wikipedia

レアメタルで、代表的な名前を上げてくださいと言われて、最初に思い浮かぶのがタングステンって方は、多いのではないでしょうか?あとは強力磁石のネオジウム(ネオジム)も、数年前に中国のレアメタル輸出規制問題などがあって有名になりましたね。

タングステンは精密加工のための超硬工具(ちょうこうこうぐ)や、溶接の電極として、産業に欠かせないレアメタルです。

融点が高く(3422℃)、ずっしりと重く、比重はゴールドと同じ19.3。耐食性も高いので、宝飾品の素材として、わたし自身も注目して研究していました。



タングステンの指輪は作れるのか?

実は過去に、純タングステンの材料を手に入れて、削り出して指輪を制作してみたことがあります。しかし、出来たのは落としただけで簡単に割れてしまうほど横からの力に弱い、実用に耐えられないリングでした。完成して数秒の命でした。

純タングステンは、焼結したものを熱間鍛造で成形する製法上、金属繊維が一方向だけに成長する性質があります。竹のように繊維状の金属組織が縦方向に揃った材料になります。

これをリング状に削り出すと簡単に割れてしまいます。また融点が高くて溶かすこともできないので、純タングステンは指輪への加工がほぼ不可能だと結論づけました。


他には、純タングステンの粉末を銀や銅で焼き固めたり、樹脂で固めてみたりと、工業分野でタングステンウエイトを制作する方法と同じこともいろいろ試してみました。しかし、これはタングステン粉末の練り物であって純タングステンではないですね。

また、炭化タングステンをコバルトで焼き固めた超硬合金の指輪も作成しました。自分で焼結して作ったりもしましたし、超硬工具を作っているところに発注して指輪形状を作ったりもしました。

この超硬合金の指輪が、現在世の中に「タングステンの指輪」として出回っているものと同等のものです。超硬工具を作るのと同じ工程で制作できるため、安価に量産もできます。

弊社でレアメタルを削る際に使う刃物は超硬合金(タングステンカーバイド)です。

この超硬合金は非常に硬く、キズも全くつかないので、これはこれで素晴らしいのですが、金属アレルギーの原因になりやすいコバルトやニッケルが焼結補助剤として含まれるので、結局は指輪にすることは敬遠しました。

また炭化タングステンをコバルトで焼き固めた、この超硬合金の指輪を、「タングステンの指輪」として販売するのは、弊社のスタンスとは違うと思っています。やっぱりタングステンの指輪を名乗る以上は純タングステンであって欲しいし、そうでないと、弊社の他の純金属の指輪に対して失礼だ(笑)と思ってしまいます。



世の中のタングステンの指輪は、炭化タングステン

実際のところ、「タングステンの指輪」として販売されているものの商品説明をよく読むと、炭化タングステンの焼結体である、超硬合金(ちょうこうごうきん)であることが分かります。タングステンカーバイドと呼ばれたりもします。

タングステンとタングステンカーバイドは、全く別物です。過去に書いたことがありましたが、ジルコニウムとジルコニアが全く別物であることと同様です。タングステンは金属ですが、超硬合金は金属とセラミックの中間のような物質(=サーメット)です。セラミックの「SER」とメタルの「MET」を合わせた造語としてSERMET(サーメット)と呼ばれます。

ちなみに余談ですが、釣具の世界で一時ブームになったゴールドサーメットは、このサーメットに窒化チタンの金色の皮膜をつけたものです。

工具の刃物として大量に製造されている、この超硬合金は、炭化タングステンにコバルトを焼結補助剤として10w%程度混ぜて焼き固めたものですので、金属アレルギーのなりやすさはコバルトと同程度ということになります。

コバルトといえば、ニッケルの次に金属アレルギーになりやすい金属ですので、金属アレルギーの方は避けた方がいいです。

また、工業分野ではコバルトの発ガン性が問題視され、コバルトを含まない超硬合金が開発されましたが、コバルトの替わりの焼結補助剤として用いられているのはニッケルであり、コバルト以上に金属アレルギーの原因になりやすい元素です。このニッケルを用いた超硬合金が「コバルトフリーのタングステン」と書かれていたりしますが、やはり宝飾品には向かないです。



タングステンの指輪のメリット・デメリット

まとめると、タングステンの指輪(実際は超硬合金の指輪)のメリットは、岩も砕くほど硬い、傷がつかない、珍しい、黒くて見た目もかっこいい、ということなどが挙げられるかと思います。

超硬合金の硬度は、一般的に指輪として販売されているコバルト10%前後のものでビッカース硬度はHV1300前後になります。日本刀に使われる玉鋼でさえ、ピンピンに焼きが入った刃先の部分でビッカース硬度は600前後なので、武器になるほどの凄まじい硬さです。

一方でデメリットは、金属アレルギーの原因になりやすい金属(コバルト、ニッケル)を含むこと。また硬すぎるために切断ができず指を骨折して腫れ上がった時に抜けなくなる事故が発生したりもしているようです。



金属アレルギーに悩む方におすすめのレアメタル

弊社TOKYO DIAMONDでは、全118の元素、うち81の金属元素を全て検証し、指輪として安全性と物理的安定性を約束できる金属は全部で17種類と特定しました。

その中でも、アレルギーフリーな5種類の金属、タンタルTa、ハフニウムHf、ジルコニウムZr、ニオブNb、チタンTi、とアレルギーが少ない6種類の金属、イリジウムIr、プラチナPt、金Au、ルテニウムRu、レニウムRe、ロジウムRh、を厳選して指輪をお作りしています。

特にタンタルは、金属アレルギーは100パーセント心配が無く、磨き上げると、非常に美しい見た目に仕上がります。

タンタルという名前は、聞き馴染みがなく、時にタンタルとタングステンは名前が少し似ているために混同されることもありますが、全く別の金属です。

タンタルは、医療分野でカテーテルや人工骨などに用いられる、人体に対して安全性の高い金属です。

タンタルの作品写真は、こちらの<素材一覧ページ>でご覧いただけます。



このコラムの執筆者


<<ぜひご一読ください。>>

TOKYO DIAMONDでは、金属アレルギーにお悩みの方に、100%金属アレルギーの心配がない結婚指輪をお作りしています。

素材やデザインなど17年の研究成果と、起業のストーリーを、こちらに詳しくまとめています。
→ 金属アレルギーにならない指輪の作り方

どうぞ、ご一読ください。


次の記事: »

前の記事:«


新作情報を見る