金属アレルギーになりにくいとされるチタンに、アレルギー症状が出てしまう理由

金属アレルギーは、普段つけているネックレスやピアスなどの金属が汗で溶けだして体内に入り、人体のタンパク質を変化させてしまい、その変化したタンパク質を人体が異物として判断した結果、拒否反応として起こるものです。

今はなんともないとしても誰にでも発症する可能性があり、しかも一度発症すると一生その体質は続くという、厄介なものです。

したがって、アクセサリーはアレルギーを起こしやすい金属を避けて使用するのが望ましいです。特に汗をかきやすい夏場や、ピアスホールを開けたばかりの時期は要注意です。

最近は、アレルギーに配慮した商品も目にするようになりました。しかし、アレルギーが起こりにくいといわれるチタン製のピアスを付けていたのに、アレルギーを起こしてしまったという相談もよくお聞きします。

純粋なチタンでアレルギーを起こすのは非常に稀なケースです。この場合、疑わしいのは「他の金属とチタンとの合金である」あるいは「チタン以外の金属が組み合わせられている」などの理由が考えられます。


一番多いのはニッケルアレルギー

金属アレルギーの症状は、人によって軽く赤くなる程度の軽度のものから、全身に湿疹が広がる重度のものまで様々です。

反応が出る金属も違えば、複数の金属にアレルギーを起こす方もいます。数多い金属の中でも、特にアレルギーと関係の深いものがニッケルです。

ニッケルは、日常生活でももっとも用いられている金属で、50円硬貨、100円硬貨、衣服のボタンなどの金属パーツ、針金などのほか食器にも使われています。豊富でサビづらいのがニッケルの特徴で、金属のピカピカとした光沢が失われないようにニッケルが使われます。また、チョコレートや大豆などの食品、コーヒー、緑茶など、ありとあらゆるところに存在するため、アレルギーを起こしてしまうと非常にやっかいな金属です。

さらに、金属アレルギーの方は、クロムにも反応が出る方も多いことが知られています。ほかにも水銀、コバルト、スズ、パラジウム、鉄、アルミニウムなどはアレルギーを起こしやすい金属です。


チタンがアレルギーを起こしにくい理由

アレルギーは気になるけれど、アクセサリーを身につけたい、という方は多いでしょう。

それゆえ、なるべく金属アレルギーを起こしにくい素材を選ぶことをおすすめします。

安価なアクセサリーはニッケルやコバルト、真鍮(銅と亜鉛の合金)などが多く、アレルギーが心配な方は避けた方が無難です。

特に気をつけなければいけないのは、ピアスです。

市販されているファッションピアスの素材で、金属アレルギーになりにくいとされているものは、チタン、サージカルステンレス、シルバー、プラチナ、金などです。

しかし、サージカルステンレスにはニッケル、クロムが含まれています。シルバー、プラチナ、金も、純度が高いものは比較的安全性も高いのですが、過敏な方には反応が出ます。14金や10金、シルバー925などのように混ぜ物の多い合金は、特に気をつける必要があります。プラチナジュエリーにはパラジウムが混ぜられていることが多く、これもやはり反応が出やすいです。

おすすめしたいのは純チタンです。チタンは、軽くて丈夫な金属で、耐食性が高く、汗や体液に溶け出しにくいため、金属アレルギーはほとんど起こらないからです。

その理由は、チタンは酸素との結びつきが強く、表面に薄くて安定したTi02の酸化膜を作ります。この酸化膜にさえぎられているため、内部の金属イオンが溶け出さないのです(不動態と言います)。

このような不動態の性質を持つチタンは、歯科インプラントや人工関節など体内に埋め込むかたちで使用されるほどで、その安全性には高い信頼があります。



チタンでかぶれてしまうのはなぜ?

それでも、まったくアレルギーを起こさないわけではありません。チタン製品でアレルギーを起こす方もいらっしゃいます。

というのは、市販のチタン製品によってかぶれが起こった場合、ほとんどはチタンに対してではなく、他の金属に対してのアレルギーと予想されます。

チタンのアクセサリーの多くは、実はチタンと他の金属との組み合わせで作られており、ニッケル、クロム、亜鉛、銅など、アレルギーを起こしやすい金属を含んでいる場合があります。

よくあるチタンポストのピアスは、耳に刺すポスト(軸)の部分はチタンでも、ヘッドやキャッチは真鍮であったり、ステンレスであったりします。

また、形状記憶合金であるチタン-ニッケル合金などが用いられている場合もあり、その合金の中のニッケルにアレルギーを起こす場合もあります。

ですから、チタンのアクセサリーには、次のようなものがあるということを覚えておきましょう。

・オール純チタン
・チタン合金
・チタンとその他の金属の組み合わせ

上記のなかで、アレルギーが起こる可能性が低い素材はオール純チタンです。

ちなみに、医療用チタンという言われ方をする場合がありますが、純チタン1種も、純チタン2種も、あるいはチタンニッケル形状記憶合金も、6アルミ-4バナジウム-チタン合金も、すべてをまとめて医療用チタンと呼ばれていますので、「医療用」と言われているからといって全く金属アレルギーの心配がないかというと、そうではありません。

やはり、純チタン1種または、純チタン2種が安心です。(1種と2種の違いは主として溶存酸素の濃度の違いです。2種のほうが溶存酸素が多く、硬いのが特徴です。)

チタン製品を選んだつもりでも、含まれている金属によってアレルギーを起こしてしまった、などということのないように、購入の前によく確認をしましょう。


ごく稀にチタンでかぶれてしまう方も

歯科業界に詳しい友人からは、ごく稀にチタンのインプラントで金属アレルギーの症状が出る方もいるという話を聞きます。

チタンは、基本的に耐食性は高いのですが、塩酸や硫酸にはわずかに溶けるので、それが原因かもしれません。または微量の不純物の影響かもしれませんし、歯科金属には6-4チタン合金が使われることもあるようなので、合金添加元素が原因なのかもしれません。

またチタンは海水に永年晒されると、ゆっくりですが腐食してゆきます。(海水に晒される部材には、パラジウムを1%添加したチタン-パラジウム合金が開発されています。ただパラジウムなので生体用には不向きです)

ですので、金属アレルギー対応の素材として有名なチタンですが、まったく腐食しないというわけではないです。


ちなみに、チタンの人工骨には、タンタルをコーティングして耐食性・生体適合性が高められた部材が開発されています。

人工骨ならば軽いことが重要なので、軽いチタンをベースにしてタンタルを表面にコーティングした複合材料が良さそうですが、宝飾品ならば純タンタルの無垢材がいいのではと思います。

タンタルならば、酸にもアルカリにも腐食しないので、金属アレルギーの心配はありません。弊社でも過敏な方や、一切金属アレルギーの心配はしたくないという方には、タンタルをおすすめしています。

タンタルと金属アレルギーに対する安全性については、こちらに詳しくまとめています。
金属アレルギーにならない指輪の選び方



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