口内炎が出来やすいのは歯科金属の金属アレルギー?チタンインプラントはどうなの?

金属アレルギーの方は、歯科金属が原因で口内炎ができやすいと、よくお聞きします。

また最近、インプラントに用いるチタンや、歯科金属について興味を持ち、詳しく調べたり、歯医者さんに聞いたり、カタログを見せてもらったりする機会があったので、歯科金属の金属アレルギーについてまとめておきたいと思います。


歯科治療に用いる金属は主に3つ

1.被せ物、詰め物の歯科金属
2.インプラント
3.歯列矯正のブラケットやワイヤー

それぞれについて、用いる金属の種類など、詳しくまとめたいと思います。


歯科金属の金属アレルギーは全身に広がる可能性がある

金属アレルギーは、大きく2つに分類することができます。

  • 局所的金属アレルギー
  • 全身型金属アレルギー


局所的金属アレルギーというのは、金属が触れている部分にだけ、金属アレルギーの症状が出るものです。

宝飾品による金属アレルギーは、局所的金属アレルギーがほとんどだと思います。他、歯科金属の周りに口内炎ができたりなども局所的金属アレルギーです。


一方で、歯科金属において気をつけるべきは、全身型金属アレルギーです。

というのは、口内の唾液によって歯科治療に用いた金属部材が溶け出し、金属イオンが、胃や腸などの消化器官から吸収されて、血液に乗って全身をめぐり、全身に金属アレルギーの症状が広がる可能性があるからです。

歯科治療に用いる金属部材が溶け出しているなんて、まさか!

と思う方がいるかもしれませんが、人間の体液というのは金属を腐食させる力が非常に強く、常に歯科金属からは金属イオンが溶け出しています。例えば被せ物の金属を舌で触れると、金属特有の味を感じるのではないかと思いますが、これが溶け出した金属イオンです。

湿疹やかゆみだけでなく、倦怠感、なんとなく頭痛、肩凝り、疲労などの体調不良が続いている原因が、歯科金属による金属アレルギーの場合もがあります。


被せ物、詰め物に使われる金銀パラジウム合金

歯科金属の中でも、特に金属アレルギーのトラブルの原因になっているのは、いわゆる「銀歯」です。

この銀歯は、名前は銀歯ですが、実際は金と銀と銅とパラジウムの合金です。歯医者さんはキンパラとかギンパラと呼んでいるのをよく聞きます。

金(Au)が12%、銀(Ag)が52%、銅(Cu)が15%、パラジウム(Pd)が20%という組成です。

この成分の中でも、特に金属アレルギーの原因になりやすいのがパラジウムと銅です。

金属アレルギーの方は、この銀歯を外して、セラミックや樹脂に替えることがすすめられています。

ちなみに日本では、この銀歯が保険適用になっていることで銀歯の普及が著しいですが、海外では樹脂で処置することが多いようです。

また最近では、鋳造チタンの被せ物(チタンクラウン)が保険適用になったという発表がありました。
医療機器の保険適用について(令和2年6月収載予定)


インプラントに使われるのはチタン合金

上記、「銀歯」以外の金属アレルギーの報告は、銀歯に比べると極端に少ないのですが、書いておきたいと思います。

歯科用インプラントによく用いられるのは、チタン合金です。

インプラントというのは、人体に医療器材を埋め込むこと(implant=植え付ける、埋め込む)を言います。歯科用に限ると、人工歯根のことを指します。骨にボルト状のチタンを埋め込んで、その上に人工歯を固定します。

このチタンインプラントの合金組成について、歯医者さんにもヒアリングしたのですが、なかなかメーカーもどんなチタン合金なのか明かしたがらないと聞きました。

またインプラントのメーカーは十数社あり、全てネジのピッチや工具などの規格が違うのだそうです。おそらく、それぞれのメーカーが歯医者さんを囲い込んでいるからでしょうか。(この世界にも、いつか工業用のネジの世界のような統一規格の動きが出てくるといいですね。)

チタンインプラントと一口に言っても、どのメーカーのどんな合金組成なのかまで追えない可能性があります。ですので、以下に書くチタンインプラントの合金組成の内容は、論文や合金組成を元にした、あくまでも推察です。


チタンインプラントの合金組成

調べてみると、多く見つかるのはTi-6%Al-4%Vという組成の、いわゆるロクヨンチタンと言われるチタン合金がインプラントに使われている(使われていた?)ようです。α相のチタンとβ相のチタンが混在するα+βチタンで、純チタンよりも硬くて丈夫な合金です。

でもこれ、今も本当に用いられているのでしょうか?少し疑問に思いました。バナジウムもアルミも、チタンよりも耐食性が低く、唾液中に溶け出すのではと思います。またバナジウムの毒性も気になるところです。チタンインプラントに金属アレルギーの報告例があるという話は以前から聞いていましたが、もしかしたら原因はこれらの合金添加元素によるものかもしれません。

他には、純チタン2種を使ったインプラントも多いようです。純チタンの柔らかさは、表面処理で補っているようです。ハイドロキシアパタイトを表面にコーティングして硬度と骨との結合性を高める工夫をしているものや、チタンの酸化被膜を厚く生成させて表面処理をしているものなどが見つかります。

他、Ti-6%Al-7%Nbという、チタン−アルミニウム−ニオブ合金も用いられるようです。バナジウムの代わりにニオブを用いることで、より安全性に配慮したα+βチタンです。

おそらく、このインプラント用のチタン合金の分野は、これからももっと進歩してゆくと思います。

ちなみに、現在、チタンのインプラントに金属アレルギーが出る人には、ジルコニアセラミックのインプラントもあります。


歯列矯正の形状記憶合金ワイヤーにも注意!

歯列矯正にも、金属材料は使われます。

歯列矯正は、「ブラケット」と言われる歯に接着させるパーツと、ブラケットを通して力を加える「ワイヤー」の2つのパーツで出来ています。

ブラケットは、金属製のものはステンレスであることが多いようです。ニッケルフリーのステンレスのようなので400番台のステンレスでしょうか。

金属アレルギーに配慮した場合は、ブラケットは樹脂製のものやセラミック製のものを用いるようです。

また、ワイヤーは、形状記憶合金であるチタン-ニッケル合金が一般的に用いられます。ただ、この合金はニッケルを含むので、金属アレルギーの注意が必要です。

ニッケルフリーのワイヤーとして、モリブデン-ジルコニウム-スズ-チタンの組成のβチタンワイヤーや、タンタル-ニオブ-ジルコニウム-チタンの組成の「ゴムメタル」という合金のワイヤーも開発されています。

金属アレルギーの方で、歯列矯正を希望する方は、「ニッケルフリー 歯列矯正」というように検索して、金属アレルギーに配慮した歯医者さんを見つけるといいのではないかと思います。


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