【金属アレルギーの種類】安全な5つの素材と避けるべき10の素材
金属アレルギーと聞いて、すべての金属がダメなように思えますが、実はそうではありません。
金属アレルギーになりやすい10種類の金属と、金属アレルギーを起こさない5種類の金属がありますので、詳しく分類して、お伝えしたいと思います。
宝飾品として身に着ける金属や、触れる金属を意識する際に、参考にしていただければと思います。
目次
金属アレルギーになりやすい金属と、金属アレルギーを起こしにくい金属
金属アレルギーになりやすい金属とは、つまりイオン化して溶け出しやすい金属=イオン化傾向の高い金属です。
逆に金属アレルギーを起こしにくい金属とは、イオン化傾向の低い金属です。
イオン化傾向は、高校の化学の授業で、こんな図を覚えている方もいるのではないかと思います。
金属アレルギーのメカニズムは、汗や体液でイオン化して溶け出した金属が、体内のタンパク質と反応して、金属アレルギーの原因になるからです。
ですのでイオン化傾向の低い金やプラチナなどの貴金属は金属アレルギーの原因になりづらいですし、塩水で溶けたり錆びたりするような鉄やアルミ、ニッケルなどは金属アレルギーになりやすいのです。
金属アレルギーになりやすい金属の順番
日常生活で触れる可能性がある金属を、金属アレルギーになりやすいものから順にならべてゆくと、次のようになります。
一番金属アレルギーになりやすいのが、
・ニッケル
・コバルト
それから、
・スズ
・水銀
・亜鉛
・パラジウム
・クロム
・鉄
・アルミニウム
・銅
と並んで、そのあとに
・ルテニウム
・バナジウム
・モリブデン
・タングステン
・レニウム
・ロジウム
・プラチナ
・イリジウム
・銀
・金
そして、
・チタン
・ジルコニウム
・ニオブ
・ハフニウム
・タンタル
という順番になります。
タンタルという金属は、強酸にも強アルカリにも全く溶けず、金属アレルギーの原因にはなりません。
上記の順番は、一般的な金属アレルギーになりやすい序列になります。特に上記序列の真ん中あたりは、人によって逆転することもあり、銅には反応するけれどパラジウムには反応しないなど個人差はあります。
金属アレルギーで注意すべき身の回りの金属
金属アレルギーになりやすい金属が使われている身の回りの金属製品についても、まとめておきます。
ニッケル
- 硬貨(50円玉、100円玉、500円玉)
- ステンレス製品(スプーンなどの食器、ベルトのバックル、腕時計、ギターの弦など、サージカルステンレスにもニッケルが12%含まれます。)
- 形状記憶合金(歯科用矯正具、ブラジャーのワイヤーや、メガネのフレームなど)
他チョコレートなどニッケルを多く含む食品があります。
*最近では、歯科用矯正具には、金属アレルギーに配慮したニッケルフリーの材料も開発されています。(ゴムメタルやβチタンワイヤーなど)
*サージカルステンレスは、金属アレルギー対応の製品と謳われて販売されていることがあります。これは真鍮やシルバーやその他のステンレスとの比較で金属アレルギーになりにくいということであって、全く安全かと言うとそうでは無いので注意が必要です。
コバルト
- コバルトを添加した鋼鉄製品(コバルト鋼、耐熱鋼)
- コバルト磁石
- 超硬工具
*「タングステンの指輪」として販売されているものは実際は超硬合金(炭化タングステンをコバルトで焼き固めたもの)なのでコバルトを含みます。
スズ
- 硬貨(10円玉、5円玉)
- 電子部品のはんだ
- スズ食器
- スズ工芸品
- ブリキ製品(ブリキは鉄にスズめっきを掛けた材料です)
- ブロンズ像など青銅合金(青銅は銅とスズの合金です)
- ピューター(ピューターはスズとアンチモンの合金です)
- 歯科矯正用 TMAワイヤー
*ニッケルフリーの歯科矯正ワイヤーとして用いられるTMAワイヤーは、チタン、モリブデン、ジルコニウム、スズ合金なのでスズを含みます。(Mo10.0~13.0%、Zr4.5~7.5%、Sn3.75~5.25%)
水銀
- 水銀の温度計
- 体温計
- 歯科金属のアマルガム(最近は用いられません)
- アマルガムメッキ
*水銀は金属アレルギーよりもむしろ、水銀中毒を起こす有毒物として扱われるため、今では日常に触れるものに用いられることは、ほとんどありません。
亜鉛
- 真鍮・黄銅製品(五円玉、真鍮のアクセサリーなど)
- 亜鉛めっき・トタン板(トタンは鉄に亜鉛めっきを掛けた素材です)
- アルミ製品(アルミ製品のほとんどはアルミと亜鉛の合金なので亜鉛が含まれています)
*金管楽器も真鍮(ブラス)で出来ているので亜鉛を含みます。
パラジウム
- ホワイトゴールドの宝飾品
- プラチナの宝飾品(プラチナの宝飾品には大抵パラジウムが含まれます)
- 歯科用金属(銀歯)
*プラチナ900と表記される宝飾用プラチナは、プラチナとパラジウムの合金です。
*歯科用金属(保険治療で用いられるいわゆる「銀歯」はパラジウムと銀と金と銅の合金です。)
クロム
- ステンレス製品(スプーンなどの食器、ベルトのバックル、腕時計、ギターの弦など、サージカルステンレスにもクロムは含まれます。)
- クロムメッキ(メガネのフレーム、ベルトのバックル、ボタンなど)
- 革製品(クロムでなめして製造します)
*クロムには、6価クロムと3価クロムというイオン価の違う2種類があり、6価クロムのほうがより毒性が強いとされていますが、いずれも避けたほうが賢明です。
鉄
鉄は挙げるまでもないほど、日常にありふれています。
- 釘
- 工具
- 鉄棒
- 手すりやノブ
- キーホルダー
- ステンレスも鉄を多く含む合金です。
アルミニウム
アルミニウムも挙げるまでもないほど、日常にありふれています。
- アルミ缶
- 一円玉
- アルミサッシ
- ジュラルミン(ジュラルミンはアルミと銅の合金の総称です)
- 64チタン(6%アルミ4%バナジウムを添加したチタン合金)
銅
- 硬貨(5円玉、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉)
- ゴールドの宝飾品(ゴールドの宝飾品には大抵銅が含まれます)
- シルバーアクセサリー(シルバー925やシルバー950には銅が含まれます)
- 金管楽器
- ブロンズ像など青銅合金
*18金ゴールドは金に銅と銀を混ぜた合金です。
*14金ピンクゴールドや10金ピンクゴールドは、金に銅を混ぜた合金です。
金属アレルギーになりやすい金属と金属アレルギーを起こしにくい金属の序列と、それぞれが使われている製品についてまとめさせていただきました。
一般に金属アレルギーが心配が少ないと言われる貴金属も、プラチナにはパラジウムが含まれており、ゴールドには銅が含まれているので、過敏な方は注意が必要です。
金属アレルギーにならない金属素材
チタン、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウムの4つは金属アレルギーの心配が限りなく低く、タンタルは金属アレルギーにならない安全な金属素材です。
ただ、合金として他の金属が混ぜられていると、混ぜられている金属によって金属アレルギーの原因になる場合があります。
それぞれが使われているものや、合金について以下の通り、まとめました。
チタン
- 歯科インプラント
- 人工骨
- チタンの宝飾品
*チタン合金の中には、金属アレルギーになりやすい金属を含む場合があるので注意が必要です。(チタン×ニッケルの形状記憶合金や、アルミニウムを含む64チタン、TMAワイヤーにはスズが含まれます。)
*純チタンの柔らかさを補うために、溶存酸素量を増やして硬度を上げた第2種チタン、他ジルコニウムやタンタルを添加して硬くしたβチタンなど安全性の高いチタン合金もあります。
*ごく稀に、チタンの歯科インプラントでは、金属アレルギーの症状が出る人もいるようです。
ジルコニウム
- ジルコニア人工歯
- ジルコニウムの宝飾品
- ゴムメタル
*純度100%のジルコニウムを手に入れることは難しく、ほとんどのジルコニウムには1〜2%のハフニウムを含みます。ハフニウムも金属アレルギーの心配はないのでハフニウムを含んだジルコニウムは安全です。
*ゴムメタルは、チタンとジルコニウムとタンタルとニオブとバナジウムの合金です。金属アレルギーの原因になる金属を含まないため、歯科矯正ワイヤーに用いられます。
ニオブ
- ニオブの宝飾品
- ゴムメタル
*純ニオブに触れる機会は、弊社で制作している宝飾品ぐらいしか無いかと思います。
*鉄にニオブを添加した耐熱合金がありますが、主成分が鉄なので金属アレルギーに対しては安全ではありません。
ハフニウム
- ハフニウムの宝飾品
- ジルコニウムの中に分離しきれないで1〜2%が含まれています。
*純ハフニウムに触れる機会は、弊社で制作している宝飾品ぐらいしか無いかと思います。
タンタル
- 人工骨
- 人工心臓の金属部品
- カテーテル
- 脳内の血流を検査するために血液に注入するタンタル微粒子
- ゴムメタル
- タンタルの宝飾品
*弊社では、金属アレルギーに過敏な体質の方には、純タンタルをおすすめしています。純タンタルは王水にも溶けないほど全物質中で最高レベルの耐食性を持ちます。
まとめ
以上、金属アレルギーの方にとって、
安全な5つの素材
・チタン
・ジルコニウム
・ニオブ
・ハフニウム
・タンタル
避けるべき10の素材
・ニッケル
・コバルト
・スズ
・水銀
・亜鉛
・パラジウム
・クロム
・鉄
・アルミニウム
・銅
を分類して、詳しく解説しました。
ちなみに、金属アレルギーに悩んでいた方で、サージカルステンレス(ピアスなど)は大丈夫だったという意見もいただきます。大丈夫な人はそれでいいのだと思います。上記はかなり厳しめに分類しています。
アクセサリーなどの装身具なら外せばいいですが、インプラントや人工骨など体内に埋め込まれて半永久的に触れ続けるものには、気をつけたいところです。
本当に困っている方には、こういう曖昧にしない厳密な情報が役立ててもらえるはずだと思い、書いています。
ちなみに、結婚指輪も装身具ではありますが、生涯着け続けるものなので、金属アレルギーで着けられなくなってしまったなら残念ですね。完全に安心できるものとして弊社ではタンタル、あるいは白くて明るい色のハフニウムの結婚指輪をお作りしています。
弊社TOKYO DIAMONDでは、このタンタルとハフニウムに注目して、最高レベルの結婚指輪を作りたい!と思い、2010年に「金属アレルギーにならない結婚指輪」を開発しました。
それまでは、金属アレルギーに配慮したものはチタンの量産品しかありませんでしたし、結婚指輪として誇らしく、美しく、着けられるものがありませんでした。
開発以来、ご注文をいただくほどにデザインのバリエーションも豊かになり、非常にたくさんのお喜びの声をいただいております。
以下にタンタルやハフニウムの指輪を、お客さまの声と写真画像とともに公開しています。どうぞご覧ください。
タンタルの指輪をご注文いただいた、お客様の喜びのコメント集
→ https://tokyo-diamond.jp/voice-tantalum/
ハフニウムの指輪をご注文いただいた、お客様の喜びのコメント集
→ https://tokyo-diamond.jp/voice-hafnium/
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なぜ、私が金属アレルギー専門のジュエリーブランドに、こんなに情熱を持って取り組んでいるのか?
こちらのコラムに詳しく書いているので読んでみてください。
→ 金属アレルギーに悩む彼女に、プロポーズしたら、一緒に会社を作ることになった話。
このコラムの執筆者
参考論文・参考文献
各種矯正用β-チタン合金ワイヤーの機械的特性とその臨床的位置づけ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdmd/34/3/34_KJ00009972639/_article/-char/ja/
TMA ワイヤー
https://www.kavo.co.jp/wp-content/uploads/2015/07/TMA_wire.pdf
Carotid Wallstentの編み込み角度と径を利用したArtifact低減策の検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnet/5/4/5_p.0504.07/_pdf/-char/en
医療法人社団 優響会 新宿御苑前歯科
https://www.shika.in/service/implant/
無転位塑性変形機構による多機能新合金『ゴムメタル』
http://www.toyotsumaterial.co.jp/images/pickup-images/gummetal.pdf
不思議な金属材料 “ゴムメタル”
http://www.ostec.or.jp/TOP/28(H16.7).pdf
ONYX 液体塞栓システム LD(案)
http://jsnet.website/sozai/info-device/090331onyx-IFU.pdf
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